先日、社内研修旅行で奈良、京都を中心に寺院等をめぐる傍ら、目に留まった近代・現代建築についていくつかご紹介させて頂きます。
まずは大阪の梅田にある「梅田換気塔」です。これは日本を代表する建築界の巨匠で、近年の建築では日生劇場や京都の佳水園、大阪では心斎橋の旧プランタンや新歌舞伎座(意匠)などを手がけた村野藤吾氏の設計によるものです。大学時代から講義や建築関係の書籍で知ってはいたものの実物を見るのは初めてです。

地下街の巨大な換気扇から吹き出す強い風を、周囲の歩行者に直接ぶつけず、かつ効率よく上空へ逃がすためのもので、村野藤吾氏は、風の抵抗を計算し、気流をスムーズに上空へいなす形を追求した結果、このなめらかな曲面(三次曲面)に行き着いたと言われております。

1960年代初頭に作られたものですが、外装にはステンレス板が使用されており、80年も経っているとは思えない美しさを感じました。ただ街並みに調和しているというよりは異彩を放っているという感じではありました。
次に大阪中之島美術館です。大阪の文化・芸術の中心地である中之島に2022年2月に開館した現代的な美術館です。黒い立方体が宙に浮いているかのような、洗練された外観デザインが特徴的で、遠藤克彦氏の設計によるものです。遠藤氏について調べてみると東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了後、山本理顕氏の設計工場を経て、1997年に自身の建築設計事務所(現:遠藤克彦建築研究所)を設立されているとのこと。九州の方での作品は無く、実作を見るのは今回が初めてです。

印象的なのは真っ黒の外壁、これには遠藤氏もかなり拘りがあったみたいで、プレキャストコンクリート板の外壁材に黒い砕石を混ぜ、表面をジェット噴射で削って作られているとのことです。確かに周囲から異彩を放っており、この風合いが長い年月を経た時にどんな状態になっているかが気になるところです。

時間の都合上、内部はあまり見ることができませんでしたが、広い吹抜け空間と交差するエスカレーターとトップライトから落ちる光が印象的でした。建物の構成としては、万が一、河川の氾濫が起きても貴重な美術品を守れるよう、心臓部である展示室や収蔵庫などはすべて3階以上に集約されています。1階と2階は、街の歩行者ネットワークとつながる「地形」のような役割として設計されているとのことです。
個人的にはこの「地形」にあたる部分が周囲に開かれた屋外空間に植栽やベンチ、広場などがあり、建物利用以外の人にも心地良いものになっていると感じました。建物自体のデザインや内部空間の構成も大事ですが、建物が建つ敷地や周囲の環境にどう影響を与えるかも非常に大切だなと感じました。

最後に奈良県庁舎です。東大寺に向かう前に、たまたま立ち寄った駐車場の真横にある建物が目に止まり、建物の各部材のバランスの良さ、プロポーションの美しさが気になり調べてみたところ、片山光生(かたやま てるお)という方が設計された県庁舎でした。

丹下健三氏設計のの香川県庁舎と同じく、柱や梁を露出して、杉型枠のコンクリート打ち放し仕上げとした日本建築の美観を表現しており、コンクリート造の建物でありがながら、非常に軽快な印象の建物になってます。


建物の外周にはバルコニーと深く張り出した陸屋根が回っており、非常に水平方向へ広がりが協調されており、独特な伸びやかなプロポーションを作り出しています。また、バルコニーの低い手すりは機能上よりは外観の美しさを意識していることが伝わってきます。
圧巻なのは1階部分に設けられたピロティ空間。中庭を囲むように配置された建物の奈良公園側のメイン道路に面して作られたピロティは階高も高く、非常に開放的です。
ちなみに主棟(行政棟)、警察棟、議会棟をピロティ(1階が柱だけで壁がない空間)や回廊でつなぐ構成になっています。これは、飛鳥・奈良時代の法隆寺や東大寺といった寺院の回廊や伽藍配置から着想を得たもので、古代寺院の「伽藍(がらん)配置」をイメージしているとのことです。

個人的には以前、訪れたスェーデンのストックホルム市庁舎(ノーベル賞授賞式のブルーホールで有名な)のメーラレン湖に面したピロティ空間を思い出します。中庭を囲むように建物を配置し、周辺環境から切り離した空間を作り、そしてピロティ空間を通して外部と適度な繋がりを作る。これにより施設利用者以外の通行者にも開かれた心地よい屋外空間が生まれているように思います。実際に観光者と思われる人や通行人が多数いらっしゃいました。時折、奈良公園の鹿も遊びに来るそうです。

以上です。実際の建物を見て設計者の意図を読み解き、それが実際に形になった時にそこを訪れた人にどんな印象を与えるか、また周辺環境とどんな関係性を作っているか、そんなことを考えながら必死に建物と向き合うことで、実際に自分が設計する時の糧になっていくように感じます。通常の観光旅行と違い、エネルギーも使い、非常に疲れますが、非常に価値ある時間を過ごさせて頂きました。
これを糧に今後もより良い建物をつくっていけるように精進していきたいと思います。
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設計 幸 康史
YUKi-NOiEの設計を担当しています。お客様のご希望はもちろん、建物の建つ敷地の特性を活かした住まいづくりを心がけております。
趣味はマラソン、自己ベストは2時間50分55秒です。
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